私は文字を読むのが好きだ。本はもちろん、辞書や説明書、商品パッケージに至るまで、目に入る文字は取りあえず読んでおこうという心持ちで生きてきた。読むのが好きなのだ。ちなみに私の言う「読書」にはメモをしながら論文や参考書などを読むこと、すなわち一般的に勉強と呼ばれる行為も含まれる。
趣味が読書なのかと聞かれるとそれはちょっと違うかなと思う。活字を読むのが好きなんだろう。何でも夢中になって一気に読むけど、何でも夢中になって一気に読むので、特別な感想はあまりないことが多い。説明書も面白いし、小説も面白い。夢中になるのはデフォルトで、それが特別な体験ではなくなっていると言ったらいいだろうか。対外的には何でもだいたい「面白かった」と答えている。よって私の感想は当てにならない。特別つまらないと思ったことや、途中で読むのをやめたことがないので評価が難しいのだ。
読書というのは一見まともな趣味というか、本読んで偉いねみたいな、賢いっぽい趣味だよねみたいな、そんな印象があるのが厄介だ。結局は読書も娯楽なのである。5時間本を読むというのは、5時間を娯楽に費やすということだ。ここが今回考えたい困ったことである。
読書という行為には切れ目がなくて困る。私は放っておかれれば何時間でも本を読んでしまう。お腹が空いたことにものどが渇いたことにも、日が暮れて部屋が暗くなったことにも、逆に朝になっていくことにも気付かず読み続ける。トイレに行く時やアラームが鳴った時にやっと気が付くことが多い。あとは寝落ちする時も読書をやめられる。アラームはすごく大事だ。若い頃なんて、電車で本を読んでいてターミナル駅に行ってしまったことが何度もある。
これが短編集や説明書ならその限りではない。はっきりした切れ目があるので、そこで時計を見たり、ご飯のことを考えたりできる。実用書も、章立てがはっきりしている場合が多いので読みやすい。生活と両立できる。問題なのは物語系だ。推理小説やファンタジーなどいろいろ読むけれど、だいたいどこで休めばいいか分からない。章立てはされているけれど話が続いているし、すごく続きが気になる。10分でも2分でも時間があれば本を開く。続きが気になる。ドライヤーをしながら読む、メイクをする時も横に書見台を置いて読む。夜も暗い部屋で小さな明かりをつけて読む。自分1人の時間全てに読書をねじ込んでいるといったところだろうか。
ライトノベルは特に困る。読みやすくて面白いからだ。大衆小説や一般文学が面白くないというわけではない。ライトノベルは面白さが分かりやすくて手軽なのだ。最近の動画のトレンドに似ているかもしれない。変化や盛り上がりが短いスパンでやってくるようになっているんだと思う。これが中毒性があってまずい。切れ目がないのが顕著なのだ。私はライトノベルにそこまで詳しいわけではないけれど、好きな作品は幾つかある。そのどれもが、1ページ目から最後のページまでハイライトという感じで、面白いページしかなくて困るのだ。しおりなんて出番がないと言っても過言ではない。
これは私の主観だけれど(というかこの記事は全体的に私の主観だけど)、だいたい一般文学や大衆小説は、クライマックスに差し掛かるぐらいからスピード感を増してくる。ここで目が離せなくなって夜ふかしするのだ。ところが、ライトノベルは最初から展開が細かくて激しい。私にとっては漫画を読むのに近い。読むのに労力が要らなくて、ずっと面白くて、物語があって、やめられない。しかもだいたい話が長い!
ライトノベルでなくとも、長い小説はいっぱいある。例えば、京極夏彦先生の作品も1冊が非常に分厚いことで有名だ。でも、シリーズ中の一冊一冊はだいたいはっきりと話が分かれている。1冊読み終われば「うむ、この話が終わったな」と本を置き、次の読書について考えられるのだ。しかしラノベはそうではない。何巻読んでも割としっかりめに話が続いている。同じタイトルでずっと続いていくものも多い。1巻と2巻の切れ目が、章の切れ目と大して変わらないのだ。今日が明日になる感じ。よって1冊読み終わってもまだ心がその世界から離れられず、続きを求めて彷徨っている。完結するまで待ってから一気に読むというのも手とは思うが、出会ってしまったらもう止められない。単純に堪え性がないのだろう。
投稿型サイトから始まって出版された作品では、出版された後もサイト上で更新されることがある。私の場合はまず出版されたものを、今出版されているところまで読む。そして次が出るまでその世界からまだ心が出られなくて、投稿版を1から読む。投稿版と出版版では内容が微妙に違うことがあり、こうなると2通り追いかけることになる。
しかも困ったことに、続きが出てこないと出版版の1巻に戻ってしまう。同じ話でも何度でも読めるのだ。続きが出るまで大人しく待つということができない。待っている間にまた最初から読みたくなってしまう。とにかくその世界から出られなくなってしまうのだ。こうなると時間がいくらあっても足りない。他にも読みたいものはいっぱいあるのに。ライトノベルは娯楽として最適化されすぎている、世にも恐ろしい存在だと思う。
ライトノベルとは違うけど似たジャンルに児童向け小説があって、例えば青い鳥文庫のミステリーなんかは止め時が分からなくて困る。あと海外物のヤングアダルト。高校時代に電車内で『HOLES』を読んでいて学校に遅刻したのが懐かしい。漫画もそうで、今は来月完結予定の『信長協奏曲』に脳のリソースの10%程度を常に奪われている状況だ。たまに既刊を読み返して心を落ち着けている。
だから仕事などやらないといけないことがある時には、うっかり新しい書物に手を出すことができない。読むのが好きなのに、気軽に本を手に取ってはいけない身体なのだ。なんというジレンマだろう。最近は、図書館にある本だったらできるだけ借りて読むという方法で次から次へと読む事を阻止している。だたし図書館まで徒歩1分なので、思い立ったらすぐ行けてしまう。しかも、結局家にある本をつなぎで読んでいるので、根本的な解決には至っていない。
本当は毎日寝る前に1時間とか、読書を健康的に習慣化したいと思っているのだが、なかなかうまくいかないなあと思いながら、今日も図書館に本を借りに行く。


コメント